お墓を維持・管理することが難しい時代。お墓をめぐる価値観が大きく変化しています。
私が住む地区では、小高い山の頂上から見下ろすように斜面に墓石が立ち並んでいます。山の頂上付近は名家のお墓が多く、お墓が開かれた時代の暮らしぶりによって場所(高さ)が決まったようで、下界を見下ろせる頂上付近は当時の一等地だったのでしょう。
私の家のお墓はいちばん低い山裾にあり、駐車場から徒歩で7歩。お寺の本堂もトイレも水場も近く、高齢者が増えた今、価値のなかった山裾の平場が一等地に逆転しました。
前置きが長くなりましたが、「海洋散骨」も少し前までなかったスタイル・価値です。
優雅でロマンチックで、そして自由。今日、死生観をあらためて考えさせてくれる素敵なセレモニーに立ち合いました。
日本三景の松島湾へ

船には合計で8組の家族が乗船しました。今日も猛暑日でしたが、スピードに乗った船はデッキに風をいっぱい巻き込み、とても涼しくて快適です。
客室内では、参加されたご家族がにこやかに談笑しています。「念願が叶ってよかったね」という声が聞こえてきそうな、前向きで安心したような雰囲気に包まれています。
花びらを手向ける

30分ほど走り、散骨ポイントに到着しました。
あらかじめパウダー状にした遺骨を海原にまき、花びらを手向けます。
おじいさんが好きだったという日本酒と一緒に、容器に入れて持参したマグロの刺身を割り箸で摘んで供えるシーンもありました。
波間に揺れて広がって散る色とりどりの花びらは、家族の思い出です。
鐘の音を聞きながら

最後のお別れです。
散骨ポイントをゆっくり三度旋回する間、鐘の音を聞きながら、手を合わせます。
鐘の音はなんとも悲しい響きでした。最もしんみりとする場面だったかも知れません。
松島湾観光クルーズ

日本三景の松島湾内には多数の島々が点在していて、カキの養殖なども行われています。
セレモニーが終わった後は、船内に流れる録音のアナウンスを聞きながら島巡りをしながら帰港しました。出港から帰港まで約2時間ほどでしたが、様々な表情に触れ、その思いを想像しているとあっという間でした。従来のセレモニーでは体験することのできない、爽やかで清々しい感覚があります。
松島湾内は船の往来も多いので、山の中にあるお墓よりは賑やかです。ここに散骨された方にとっては寂しくはないかも知れません。
最後までご覧いただきありがとうございました。それでは今日はこの辺で。